オニオングラタンスープ|香珈房Blog     

2014年12月20日土曜日

オニオングラタンスープ

冬になると食べたくなる、オニオングラタンスープ。出会いは数年前に遡る―。

当時日光の今市に住んでいた私は、とある施設の清掃ボランティアのスタッフとして月に1度程度那須に通っていました。
ある冬の日。その日もいつも通り朝のスタッフミーティング、そして全体ミーティングの後、担当場所の清掃手順の説明や割振り、お手伝いなどをして大勢の方と楽しく作業を行いました。昼食後も滞りなく所定の清掃作業を終え、スタッフミーティングののち帰路に。夕方暗くなる前には施設を出たものの冬の日没は早く、街灯も車通りも少ない県道30号を今市に向けて走っていました。

途中家の明かりもほとんどない場所もあり、ヘッドライトの明かりとそれに反射する道路の白線や反射板を頼りに暗い道のりを走っていると、何だか急に孤独感に襲われ、体温が下がったような、身震いするような冷えを感じました。暖房は入れていたので心の冷えというのでしょうか。
別に暗いところが苦手というわけではありません。いつも一人で通っているいつもの道。普段全くそんなこと感じないのに。

その日の担当が玄関まわりで、グレーチング下の溝掃除などをしていて体の芯が冷えてしまったのでしょうか。
かけおわった掃除機をどうしましょうと聞かれて「倉庫になおしといてもらっていい?」とおねがいしたところ「ん?関西の人ですか?」と言われ、馴染めていたつもりが思わぬ言葉の文化の壁に気付いて勝手に寂しくなってしまったのでしょうか。
それとも単に、そのタイミングで急激な寒波に見舞われただけだったのでしょうか。

そこのところはよく覚えてはいません。でもその日に限って、このままひとり暗く寒い部屋に帰るのがなんかやだなーって思ったのです。

さて、小一時間ほど走って日光北街道に入り船場を過ぎたあたりになると、ようやく帰ってきた感覚になってきます。さらに轟をぬけて芹沼の交差点に差し掛かるともう帰ったも同然。でもそのまま帰りたくない私は交差点すぐの道沿いにある洋食屋さんにふと寄ることにしました。窓から漏れる灯りがとても暖かく、少しホッとさせてくれました。

確かその店はカウンターはなくテーブル席のみ。一人でテーブルに座るのは少し恐縮ではあったのですが、とにかく手作り感のある温かいものが食べたかった。そしてメニューを見る私の目に留まったのがオニオングラタンスープでした。ハンバーグやドリアの気分ではなかった私にはものすごく魅力的に見えた。一人客だと迷惑かもしれないからとサッと食べられそうなそれを注文。そして出てきたオニオングラタンスープ。
チーズとオニオンそしてブイヨンのマッチした香りが食欲をそそります。そのひとくち目、オニオンの香ばしさと甘みを舌で感じつつのどを通るスープがじんわり染み渡る・・・。うまいっ、うまいぞオニオングラタンスープ!凍った体と心が溶解する感じというと大げさですが、料理で感動したのは久々のことで、その時の味と感覚は強い印象を私の心に残したのでした。

これが、私とオニオングラタンスープの印象的な出会いのお話。今でも冬になるとその時の印象を思い出し、オニオングラタンスープが食べたくなるのです。